虫歯は、いくつかの要素と時間が作用することで発生します。
まず、虫歯菌と砂糖が口の中で出会うことにより、歯垢（プラーク）が作られます。歯垢が付いたらすぐに虫歯になるわけではなく、歯垢がついている口の中に砂糖が入ることで、歯垢に定着している虫歯菌が砂糖を分解して酸を作ります。その酸が長時間歯の表面にあると、歯が溶かされて虫歯になります。これらの状況が重なる時間が長ければ長いほど、回数が多ければ多いほど、虫歯になりやすいと言えます。
また、果汁やイオン飲料などは、もともと酸が含まれているものが多く、歯を溶かす作用が強い飲み物です。頻回に果汁やイオン飲料を飲用すると、虫歯菌もなく、砂糖の摂取もなく、歯垢の付着がなくても、酸によって歯が溶けて虫歯になるため、子どもに与える時には特に注意が必要でしょう。
おっぱいだけでは虫歯になりません
研究により、母乳そのものには虫歯の原因になるものが含まれていないことがわかっています。したがって、母乳だけ飲ませている場合は虫歯になりません。しかし離乳食が始まり、母乳と砂糖が混ざり合う状況のもとでは、虫歯はできやすくなります。歯が生えて、砂糖を摂取し、虫歯菌の定着が起こることで、母乳も虫歯のリスク因子となります。
また、夜間は口の中をきれいにしてくれる唾液の流れが悪いので母乳が長い時間歯についてしまいやすい状況にあります。歯垢が付いているままで夜間授乳をすると、歯垢中の虫歯菌が母乳中の乳糖からも酸を作り出し、虫歯になるリスクが高くなるので注意が必要です。
母乳育児の歯列や咀嚼(そしゃく)への影響
おっぱいを飲むときのあごや舌の動きは、歯並びや噛みあわせ、物を噛む能力、言葉の発音、鼻呼吸などによい影響を与えることが近年の研究でわかってきています。母乳を飲むときの動きそのものが、自然な形で子どものお口の発達を促しています。授乳期間が長いほど、後に歯列矯正を受ける割合が少なくなることもわかっています。
母乳育児は、はかり知れないほど多くのめぐみを子どもにもたらします。そして長く続けることでより多くの恩恵が得られます。虫歯のために中断させるべきものではありません。そのためにも、虫歯に対する適切な対処法を知り、実践しましょう。
虫歯にさせないために
その１：お母さんの虫歯を治療しよう！ 生まれた時には赤ちゃんの口の中に虫歯菌はいません。多くはお母さんから感染しています。まずお母さんの虫歯をなくしましょう。
その２：食生活をみなおそう！ 砂糖を含むお菓子やジュースのダラダラ飲みは虫歯を助長します。おやつはできるだけ自然なものや非虫歯誘発性食品を選びましょう。
その３：歯磨きをしっかり！ 授乳している子にとって最も虫歯になりやすい上の前歯は特に優しく丁寧に磨きましょう。
その４：小児歯科に受診しよう！ 上の前歯が生えたら１歳前に歯科検診を受けましょう。できるだけ早めの検診を！
《引用参考文献》
「だれでもできる母乳育児」ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル メディカ出版２０００年
「母乳育児とお口の健康」島袋郁子 JALC主催第２５回母乳育児学習会資料２００８
「母乳と虫歯を考える」日本母乳の会 2008年
「おっぱいっ子とお母さんの歯の健康」ＮＰＯ法人みやぎ母乳育児をすすめる会 2008年
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