妊娠したからといって、すぐに卒乳させる必要はありません。母乳育児の専門家でもあるカナダの小児科医ジャックニューマン氏は、『もし前回までの妊娠中に何も問題がなかったら、おそらく今回の妊娠中も授乳を続けていて大丈夫でしょう。前回の妊娠で陣痛が早めにきたことがあったり、今回双子や三つ子を妊娠している場合は、母乳育児中に出るホルモンによって陣痛が促進されることがあります。この場合は時間をかけてゆっくり卒乳させていくのがいいでしょう』と言っています。ある研究によれば、正常な妊娠では、母乳育児が陣痛を促進することはないということです。
無理に卒乳させなくても、妊娠によって母乳の味が変わったり母乳の出が悪くなることがあるので、このときに自然に卒乳する子もいます。妊娠中に授乳を続けたママへのアンケートによると、６９%の子どもが妊娠中に自分から卒乳していったという結果がでているそうです。
注意が必要なとき
前回の妊娠が早産だったときは、その原因によっては次の妊娠が早産になる可能性がそうでない人より高いと言われています。こういうときは、授乳の時の子宮収縮が、早産の可能性をさらに高めてしまうこともあります。
前置胎盤の場合は少しの子宮収縮でも、出血が起こる可能性があります。
妊娠にも授乳にもたくさんのエネルギーを使います。十分な栄養がとれない場合、ママの健康が心配です。
おっぱいをやめたくなったら
そうは言っても、妊娠中に授乳を続けるのが嫌になる場合もあります。妊娠すると乳頭に痛みを感じやすくなり、授乳を苦痛に感じることも。3～4ヶ月すると和らいできますが、子どもにたのんで授乳時間を短く済ませるといった工夫をするママさんもいます。決めるのは、ママさん自身です。もしやめると決めたら、おっぱいにかわる親子の触れあいをたっぷりもちながら、愛情をかけてゆっくりと卒乳させましょう。
タンデム授乳（きょうだい同時授乳）
赤ちゃんが生まれたあとも、上の子に授乳を続けることを『タンデムナーシング（きょうだい同時授乳）と言います。いろいろな面で赤ちゃんに譲らなければならないことが多い上の子にとっては、おっぱいが安心と安らぎと触れ合いの時間となります。赤ちゃんとおっぱいを共有することで嫉妬心がやわらぐからです。でも、赤ちゃんの分のおっぱいが足りなくなるような気がしたり、赤ちゃんに集中できないのではないか、などの心配を抱くかもしれません。ママによっては、本能的に赤ちゃんを守ろうとする強い感情が働き、おっぱいを欲しがる上の子に憤りを感じて自分自身に驚くことがあります。赤ちゃんが飲み終わってから飲むこと、四六時中ではなく、一日のうち何回というようなルールを上の子どもとつくり、約束してみてもいいでしょう。また、こうした感情の変化を経験した他のママさんと話をすると気持ちが落ち着きます。おしゃべり会には、きょうだい同時授乳をしているお母さんも参加されていますから、いろいろな経験を聴くこともできるでしょう。
ママが上の子どもに授乳することへの迷いを感じれば感じるほど、上の子どももママが今でも自分を愛してくれているのかしらと不安になります。うえの子どももまだ小さいのですから、安心させてあげることが大事です。
引用参考文献
母乳育児支援スタンダード NPO法人日本ラクテーション･コンサルタント協会、医学書院 2007年
だれでもできる母乳育児
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル、メディカ出版、２００６年
母乳育児が必ずうまくいく本 ジャックニューマン メディカ出版、２００９年
おっぱい育て 涌谷桐子 週間ほーむぷらざ 第1033号 2007年
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