おっぱいに良い食事と言われているもので、その効果や根拠が証明されているものは、今のところありません。おっぱいはすでにママの体に蓄えられている栄養と、毎日食べる食事の両方から作られています。ですから基本的には、ママの健康が保てるようなバランスのとれた食事をとることがいちばんでしょう。ママの食べたものは、多かれ少なかれ母乳に出ますが、あなたが食べたものがそのままおっぱいから出てくるわけではありません。
変化し続けるおっぱい
ママの食べた食事でおっぱいに影響するのは「脂肪の量」と「風味（味や匂い）」。ママがにんにくなどの匂いの強いものを沢山食べると、赤ちゃんがおっぱいを飲まなくなったり、逆によく飲むようになったりすることがあります。これは、匂いの粒子がとても小さいために母乳の中に移りやすく、味に影響を与えるからです。赤ちゃんはお腹の中にいる時から、妊娠中ママが食べる食事の味を同時に感じていると言われています。産後も“おっぱいのための特別な食事”よりもママが食べなれたものを食べることで、おっぱいも馴染みの味になり、赤ちゃんも安心しておっぱいを味わうことができるかもしれません。
脂肪の量は、ママの食事以外にも、昼か夜か、1回の授乳の長さ、授乳と授乳の間隔によっても左右されます。授乳が頻繁だと脂肪が多い濃いおっぱいになることがわかっています。意図的におっぱいの間隔をあけたり短時間で授乳をきりあげるとおっぱいの脂肪濃度のバランスが崩れて、必要な量を飲めない可能性があります。赤ちゃんが欲しがるときに好きなだけ飲ませることで、赤ちゃん自身が脂肪のバランスのとれたおっぱいをママの身体で作らせて、飲むことができます。
あなたのおっぱいは最高！
おっぱいの主な成分で食事に影響を受けるのは脂肪だけです。その脂肪も、赤ちゃんにまかせて授乳することで、バランスよく飲んでもらうことができます。他の大切な成分は、豊かな食事をとっている人でも、粗食をこころがけている人でも、ほぼ変わりなく赤ちゃんに最適なバランスで含まれていることがわかっています。とはいっても、ママの健康を保つために、バランスのよい食事をこころがけることを忘れずに。
おっぱいの成分はなくなりません
よく、赤ちゃんの成長にともなっておっぱいは薄くなる、とか、栄養がなくなって水のようになる、などと言われますが、そんなことはありません。赤ちゃんが１歳になっても２歳になっても、母乳の中に含まれる成分はほとんど変わらないことがわかっています。もちろん、赤ちゃんを病気から守る免疫だって、おぱいを飲んでいる間は母乳の中にずっと含まれ続け、健康によい影響を与え続けます。赤ちゃんが成長して大きくなっても、おっぱいは心の栄養だけにとどまらず、身体的な健康にとっても、良い成分がほぼ変わらずに入っていますから、安心してたっぷり飲ませてあげてよいのです。
《引用参考文献》
「だれでもできる母乳育児」ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル、メディカ出版、２００６年
「母乳育児のすべて」米国小児科学会 編 メディカ出版、２００５年
「母乳育児支援スタンダード」NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会 編集 医学書院、２００７年
「おっぱいでらくらくすくすく育児」北野寿美代著、メディカ出版、２００５年
「よくわかる母乳育児」水野克己 他 著、へるす出版、２００７年
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