赤ちゃんにとってすばらしいということは、よく知られていることですが、実は、お母さんにとっても様々な利点があります。
その中のいくつかをご紹介します。
閉経前の乳がんの減少：様々な論文で、閉経前の乳がんが母乳育児により減少することが報告されています。Labbokという人の研究によれば、出産後3～6カ月間母乳育児を行った場合、乳がんになるリスクが15～46％低下します。授乳期間が延長するごとに、リスクはより低下します。
卵巣がんの減少：Gwinnらの研究によれば、母乳育児を行ったことがある人は、卵巣がんになるリスクが40％低下します。また、Rosenblattによる症例対象研究の結果では、少なくとも２か月間母乳育児を行った女性は、卵巣がんのリスクが20～25％減少しました。
子宮体がんの減少：母乳育児期間が長くなるほど、子宮体がんのリスクは少なくなるという報告があります。また、少なくとも２週間以上母乳育児を行った人のリスクは、授乳を全くしなかった経産婦よりも、子宮体がんのリスクが10％低下した、という報告もあります。近年30年の間に授乳していた人の子宮体がんのリスクは42％低下し、30歳以降で初めて授乳した女性では50％低下したという報告もあります。
骨粗鬆症の予防効果：Lopezらによる長期的な研究では、母乳育児中止後に急速に骨ミネラル化が改善するとしています。母乳育児は骨粗鬆症を防ぐという報告もあります。6カ月以上の母乳育児は、骨喪失を予防するもっとも適した方法のひとつです。
妊娠糖尿病：妊娠糖尿病は妊娠の4％に合併します。母乳育児によりその後、糖尿病に移行するリスクを半分に減らせます。
体重減少：おっぱいをあげている間は、妊娠前と比べて余分に500ｋcalの熱量（ご飯なら、２膳強くらいの量）を必要とします。米国小児科学会によると、おっぱいをあげることで通常毎月0.5～１ｋｇずつ減量することができる、とのことです。また別の統計によると、６ヶ月以上おっぱいをあげている人は、３ヶ月以下でおっぱいをやめた人に比べ、産後６ヶ月の時点で体重減少に２ｋｇの差があることがわかっています。お母さんがが意識的に体重を落としたい時には、１日100ｋcal（バターや油大さじ１杯分）控えると、赤ちゃんに影響を与えずに１ヶ月に１～1.5ｋｇ減らすことができるそうです。
産後のストレス減少：おっぱいを吸わせるたびに出るホルモンは、母乳の分泌を助けるだけでなく、お母さん自身にもよい効果をもたらします。おっぱいを作るプロラクチンというホルモンは別名「子育てホルモン」と呼ばれ、自然と赤ちゃんへ気持ちが集中するようお母さんを促してくれる効果があります。もうひとつのホルモンのオキシトシンは、赤ちゃんとの関係がより親密になるのを助ける働きがあり、別名「抱っこホルモン」とも呼ばれています。さらに、このオキシトシンにはストレスに対するお母さんの反応を鈍らせる働きがあり、母乳育児中のほうが、ストレスに対して寛容になれることがわかっています。
ただし、オキシトシンはストレスによって分泌が抑えられることもわかっているので、忙しかったり、心配事があったりするとおっぱいの分泌が抑えられる可能性もあります。産後はその他いろいろなホルモンの変化が大きい時期なので、お母さんと赤ちゃんが安心して過ごせるような周りのサポートが得られることもとても重要です。
次の妊娠を遅らせる効果：母乳育児中は生理が再開しにくいことは知られていますね。産後の無排卵を利用した、ナチュラルな避妊法があることはご存知でしたか？次の３つの条件が必要です。
赤ちゃんが６ヶ月未満である
無月経である（産後56日以降出血がない）
完全母乳（頻繁に昼夜とも授乳していて母乳以外の飲食物を一切与えていない）この３つの条件を満たす場合、98～100％の確率で避妊できることが報告されています。
引用参考文献
『母乳育児支援スタンダード』ＮＰＯ法人日本ラクテーション・コンサルタント協会編、医学書院 2007年
『母乳育児のすべて』米国小児科学会 編、メディカ出版、2005年
『よくわかる母乳育児』水野克己著 へるす出版、2007年
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